Amazon製のタブレット端末FireシリーズのOS/タブレットを動作させるための基本ソフトウェアは、
Googleがスマートフォン向けなどに開発したAndroidをベースにしたものとなっています。
さまざまなカスタマイズを行なうことで、Amazonの色々なサービスを便利かつ楽に使えるよう工夫がされています。
OSの基本的な骨格はAndroidのものを引き継いでいる部分が多いため、端末のroot化についても割と多くの部分がAndroidと共通の内容になります。
必要な情報が足りないときにはAndroid系の情報を参考にするのもアリです。
root化を巡る概念等々も共通する部分ですね。
では、以下で順番にFire OSのroot化に関するお話をまとめていきます。
最初の一歩!root化とはなんぞや?
まずはそもそも「root化とはなんぞや」と言うところから行きましょうか。
「root化」という考え方はFire OSの元になったAndroidOS、
さらにその元になったLinuxというOS、
さらにLinuxが機能等々の参考にしたUNIXという、
ワークステーションからミニコンピュータと言われるジャンルの製品まで使われたOSに由来しています。
UNIXは複数のユーザーが同時にいくつものタスクを並行して利用するという、今のコンピュータでは当たり前になったやり方を使いやすくデザインしたOSの代表格ですね。
さて、これらのUNIX系、今だとLinux系と言われることの方が多いかもしれませんが、これらのOSの管理者権限を持つユーザーのIDはrootという名前で固定になっています。
Windows系のAdministratorみたいなものです。
管理者権限がないと行えない特別な操作はrootユーザーまたは、rootユーザーの権限で行なう必要があります。
Fire OSを搭載したタブレットを使っている時には見かけ上はあるユーザーで「ログインした」操作は目に見えなくなっていますが、内部的には「一般ユーザー」でFire OSにログインしています。
一般ユーザーでは出来ない操作が結構あるのですが、それが見えないようにあれこれ工夫されているのです。ですが、ちょっと凝った設定や処理を行なおうとすると管理者権限の壁にぶつかります。
その操作上の壁を取り払う操作がroot化、ということになります。
Fire OSを使うときのユーザーをrootに切り替えて、ユーザーがOSで出来ること全部をやれるようにするのがroot化の作業です。
「何でも出来る」ということはその分、「リスクある操作」も出来てしまう意味になりますので、こちらは頭に置いておきましょう。
そもそもroot化は必要なのか?
Fire OSのroot化の作業に入る前に一つ確認しておきましょう。
root化の目的がGoogle PlayをインストールしてAndroid用のアプリを導入したい、そのことだけだとしたらまずお手元の端末の発売時期、Fire OSをのバージョンをチェックしましょう。
Fire OSの新しいバージョンではAndroidOSとの内部的な互換性が上がっていて、実はroot化しなくてもGoogle Playをインストールできます。
実際、著者は2020年版のFire HD 8にインストーラー(Androidなどの場合にはAPK)を導入することで、簡単な手順でGoogle Playが使えるようになりました。
具体的にはFire OSのバージョン7台がインストールされた端末であれば、Google Playが4つのAPKの導入で使えるようになります。
root化を始める前にまずは目的を確認してみましょう。
【Amazonタブレット】FireタブレットにGoogle Playを入れる危険性やリスクについて
root化のリスクとデメリット
通常ならばまずはメリットの方から書くのが普通だと思いますが、Fire OSのroot化に関しては万が一のデメリットがあまりに巨大ですので、最初にデメリットの方からまとめます。
割と致命的な内容になりますので、root化に臨む方はよく言われることではありますがこの作業はあくまで「自己責任の下で行なう作業である」と言うことをしっかり認識しておいてください。
root化する際のデメリットの主なものは以下の3つです。
- ミスると端末が文鎮化
- セキュリティの低下
- メーカー保証が効かなくなる
残念ながらroot化の作業は一般的に便利なアプリを入れてボタン一発で行えるような内容ではありません。それなりに面倒で場合によってはパソコン・キーボードも駆使して対応しなくてはいけないような操作が必要になるケースもあります。
その手順を間違えると、Fireタブレットが起動しなくなるリスクがあります。
また、管理者権限を持ったユーザーで常に端末を使うことになるので、一般ユーザーがウィルスに感染するよりも危険な事態に陥りやすくなります。
また、root化作業が成功しても完全にメーカ想定外の使い方ですから、メーカー保証は一切効かなくなると思ってください。無償サポートも受けられなくなるでしょう。
root化する際にはこれらのデメリットとメリットを天秤にかける必要があります。
root化するメリット
さていよいよFire OSをroot化するメリットの方の紹介です。
ザックリ単純にまとめてしまうなら、通常は行えないような便利だけれどちょっとマニアックな設定までユーザーが行えるようになる、というイメージでしょうか。
Androidのroot化とも共通しますが、以下の7つが代表的なメリットとなります。
- 不要なアプリ、サービスを削除または止められる
- 端末の性能をユーザーが調整できるようになる
- ファイルの扱いが高速化するかも?
- OSやユーザーインタフェースをカスタマイズできる
- さまざまな処理の自動化アプリが使えるようになる
- 標準だとバックアップできないファイルもバックアップ可能に
- ユーザーのスキルアップになる
Fireシリーズのタブレットは性能面ではハイエンド級を狙った高性能機ではありませんので、1や2あたりの設定変更はそれなりに使い勝手改善に効果があると思われます。
限られた性能を有効活用するには効果的な手段です。
3も性能を下支えしている基盤機能の性能アップが期待できるということで、端末の操作感全体が上がる可能性がある内容です。
4ではロック画面を表示せず、いきなりホーム画面を出すような設定変更も出来ます。他人が触れる環境では利用しないなど、セキュリティ的に問題の出ない使い方では使い勝手がかなり良くなるかもしれませんね。
7のスキルアップに関しては、コンピュータそのもの、OSそのものの理解を深めるようなタイプの、かなり高度な知識の獲得用となります。単にタブレットをよりスマートに使えるようになる、といった方向性とは違うことは注意が必要です。
本来、Amazonサービスの一部として位置づけられているFireシリーズの使い途とはちょっとズレますが、比較的気軽に試しやすいお手頃価格のタブレット端末、という観点ではこのシリーズを使う意味もありますね。
root化するための方法
Fire OSもバージョンによりroot化するための手順が異なります。このためまずはご自身の端末のOSのバージョンがいくつになっているのかをしっかりと確認しておきましょう。
購入当初のバージョンは端末が新しいほど上になっていますが、セキュリティアップデートなどと同じようにFire OS自体のアップグレードプログラムもAmazonから提供されているはずです。そちらを適用したかどうかもOSのバージョンには関係してきます。
設定画面からOSのバージョン番号をチェックしてから作業に入ってください。
※最新バージョンであるFire OS 7シリーズではroot化が確認されていない、という情報もあります。
まずFire OSのルート化の方法には大きく分けて2つのやり方があります。
それが以下。
- mtk-suを利用する
- Dirty Cowを利用する
前者はパソコンとの連携で一時的にrootユーザーでの操作を可能にする方法です。これに対して後者はFire OSのセキュリティ上の言わばバグを利用する方法で、考え方はちょっと搦め手と言えるやり方です。
問題はどちらも新しいバージョンのFire OSでは使えなくなっていることでしょう。
そういったroot化等をブロックするような対処が行なわれていないバージョンのFireシリーズ端末であれば、AndroidOS搭載機と同じようにTWRP(Team Win RecoveryProject)を導入して恒常的にrootユーザーで端末を利用することも可能になるはずです。
このあたりの情報は正直なところネット上でもかなり錯綜しており、どの方法を使えばいいかの判断はかなり難しくなっています。上に書いたキーワードからキチンと情報を集め整理して対応可能なユーザーにしかおすすめは出来ません。
まずはroot化によって何をしたいのかをよく考えてからこの処置を行なうかどうかの判断をした方が良いでしょう。
具体的にはroot化そのものが目的に近く、タブレットやOSの中身をもっと知りたいというユーザーならこの操作は外せないのでしょう。
対して何らかの使い勝手向上のための手段としてroot化を考えているユーザーは、他の方法で代わりをさせる方法を探った方が安全性は高いと言えます。
root化は作業ミスをした際の代償がかなり大きなものですから、作業に入る前にもう一度メリットとデメリットをじっくり考えてみると良いでしょう。
何度もしつこい書き方にはなりますが、root化の作業は行なう人の自己責任の下で行なうものです。この部分はしっかり頭に置いておきましょう。
まとめ!目的とリスク/リターンをよく考えよう
パソコンやタブレット端末に限らず、ユーザーがメーカーが想定しない使い方をするのには必ずリスクがつきまといます。Fireシリーズのroot化のお話も同じことですね。
完全にAmazonの保証対象外の使い方ですから、その分のリスクをユーザー自らが負うことになることは良く覚えておきましょう。
その代わりその機能が必要なユーザーには、root化しないと実現できないことをもたらしてくれるものでもあります。やりたいこと、それとroot化によるメリットとデメリットをキッチリ秤にかけた上で判断をしましょう。
例えば新しいFireシリーズの端末にGoogle Playを導入したいだけならばroot化は必要なくなりました。色々なデバイスを元々の想定とは違う使い方をする場合には、そういった周辺情報の収集作業からキッチリと行なうことが必要です。